金属3Dプリンティングの造形方式をまとめて解説!これで失敗しない3つの選定ポイント

Desktopmetal社製 3Dプリンター

近年航空宇宙業界や自動車、医療業界で需要が高まりつつある金属3Dプリンティング。ここでは、金属3Dプリンティングの様々な造形方式について、選定するポイントとともに徹底解説します!

(Desktop Metal社P-50 https://www.desktopmetal.com/products/production)

金属3Dプリンティングは、大きく2つのメリットがあります。それは、複雑な形状でも造形できる、すなわち造形の自由度が高い点。そしてもう一つは、金属3Dプリンター用のデータを用意するだけなので開発・設計にかかる期間・コストを抑えられるという点です。

しかし適切な造形方式を選定しなければ、期待通りの精度が出なかったりコストが膨らんでしまうことも。各々の方式のメリット・デメリットを把握したうえで、その方式による造形を得意とするメーカーに発注する必要があります。

>>>日本マイクロMIMホールディングスの3Dプリンティングによる加工事例はこちら!!


目次

・金属3Dプリンティングの造形方式

・適切な方式を選定するための3つのポイント


~金属3Dプリンティングの造形方式~

金属3Dプリンティングの代表的な造形方式は、次の5つです。

①パウダーベッド方式

②メタルデポジッション方式(指向性エネルギー堆積法)

③LMM方式

④FDM方式(ADAM方式)

⑤バインダージェット方式

一見しただけではどんな方式かよく分かりませんね。一つひとつ詳しく見ていきましょう。

①パウダーベッド方式

現在金属3Dプリンティングで最も採用されている方式が、パウダーベッド方式です。

こちらは、敷き詰めた金属粉末にレーザービームや電子ビームを照射し、造形部分の金属粉末のみを溶かして固めるという方式になります。レーザービームを使用する方式を、特にSLM方式やSLS方式と呼ぶこともあります。

パウダーベッド方式のメリットは、造形精度が高いこと。一方で、金属粉末を一層敷き詰めてビームを照射するという動作を繰り返して造形していくため、非常に時間がかかるというデメリットもあります。また完成時には、造形物に不要な金属粉末が付着しているため、それを取り除く手間もかかります。なお、取り除かれた金属粉末は再利用が可能です。

②メタルデポジッション方式(指向性エネルギー堆積法)

メタルデポジッション方式も金属3Dプリンティングの代表的な方式の一つです。指向性エネルギー堆積法と呼ぶこともあります。メタルデポジッション方式は、金属粉末の噴射とレーザービームの照射を同時に行い、造形部分に溶けた金属を積層・凝固させていく方式です。

メリットは、パウダーベッド方式よりも造形スピードが速く、金属粉末の除去作業も必要ないこと。さらに、一から造形するだけでなく、レーザークラッディングという摩耗部分を肉盛り修復する加工も可能です。デメリットは、パウダーベッド方式よりも造形できる形状に制限があり、造形精度も劣ることです。

③LMM方式 \\注目!!//

LMM方式(Lithography-based Metal Manufacturing)は、オーストリア・ウィーンに拠点を置く積層造形メーカーINCUSによって開発された方式です。光重合の原理を応用したLMM方式は、感光性樹脂と混合させた金属粉末に光を照射しその露光によって凝固させるというもので、非常に画期的な方式として近年注目を集めています。

この方式のメリットは、同じ金属粉末を使用した大量生産方式である金属粉末射出成形(MIM)で製造された造形品と同じ材料特性をもつ高性能部品の製造が可能になるという点です。後処理機械やノウハウを有するMIMメーカーは、このLMM方式との親和性が非常に高いと言えます。

>>>LMM方式の金属3Dプリンティングについて、もっと知りたい方はこちら!!

LMM方式金属3Dプリンティングについて

④FDM方式(ADAM方式)

日本語で熱溶解積層方式とよばれるFDM(Fused Deposition Modeling)は、材料をノズルまたは穴から押し出して積層する方式です。樹脂材料の3Dプリンティングで主流の造形方式で、最近金属でも可能になりました。こちらは熱可塑性樹脂と金属粉末を混合し造形する方式ですが、造形後に樹脂を取り除く必要があるため、脱脂・焼結という後処理が必要になります。

脱脂前の造形品をグリーンパーツと呼称するのに対し、脱脂されたものはブラウンパーツと呼ばれます。このブラウンパーツを焼結して完成です。焼結するとバインダーの隙間がなくなり約20%収縮するため、その分大きく造形する必要があります。FDM方式のメリットとしては、造形スピードが非常に速いという点が挙げられますが、金属の密度が若干低い、そして収縮率を考慮して設計する手間がかかるというデメリットもあります。

なお、業界で最も有名な金属3Dプリンターの一つ「Metal X」(Markforged社)はこの方法を採用しており、樹脂のFDM方式と区別して特にADAM方式と称しています。

⑤バインダージェット方式

バインダージェット方式とは、敷き詰めた金属粉末に液体のバインダーを噴射し固めていく方式です。パウダーベッド方式のレーザービームや電子ビームが、液体のバインダーに置き換わったものとお考えください。バインダーを噴射するため積層造形だけでは完成せず、脱脂・焼結の工程を経てようやく完成品となります。

バインダージェット方式のメリット・デメリットはFDM方式とほぼ同じです。メリットは造形スピードが比較的速い点。さらに、敷き詰めた金属粉末がサポート材の代わりとなって上の層を支えてくれるため、サポート材が不要という利点もあります。一方デメリットは、脱脂・焼結の工程が必要なため手間がかかるという点です。


~適切な方式を選定するための3つのポイント~

最後に、自社に合った適切な造形方式を選定する3つのポイントをお伝えします。

まずはこちらの表をご覧ください。

金属3Dプリンティング 比較表

表を見ていただくと分かる通り、それぞれメリット・デメリットがあります。選定のポイントは次の3つです。

□精度

□造形スピード

□脱脂・焼結工程の有無

この3つのポイントを基準に、自社が求める金属部品に合った金属3Dプリンティングの造形方式を選んでください。なお、脱脂・焼結工程の有無が重要な理由は、メーカーがノウハウを十分に持っているか否かがポイントになるためです。この工程が失敗してしまうと完成品の精度・寸法に大きな影響を与えます。

日本マイクロMIMホールディングスは、脱脂・焼結工程が必須の金属粉末射出成形(MIM)において数十年に渡る豊富な造形実績があります。この経験を金属3Dプリンティングにも応用し、マイクロレベルの微細部品製造を中心にお客様からご支持を頂いています。

 

>>>日本マイクロMIMホールディングスの3Dプリンティングによる加工事例はこちら!!

 

>>>金属3DプリンティングとMIMの活用について、もっと知りたい方はこちら!!

LMM方式金属3DプリンティングとMIMの活用について

一覧へ戻る